アタラ合同会社様

企業のマーケティングのインハウス化と展望

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左:LMP 高橋 / 中央:アタラ 杉原様 / 右:LMP 久松

業界の有識者にインタビューを行う当シリーズ。 今回はアタラ合同会社 CEO 杉原様に、これからの企業のマーケティングのインハウス化についてお話を伺いました。

目次
●広告代理店の付き合い方
 ➤広告代理店とクライアントとの関係は、今後どのように変化すべきか
 ➤インハウス化が進む企業と広告代理店の関係は?


●日本企業のマーケティング機能
 ➤日本企業におけるマーケティングの優先順位の低さ、その原因は
 マーケティングによる企業へのパートナーシップの構築がビジネスの未来を創る

広告代理店の付き合い方

■広告代理店とクライアントとの関係は、今度どのように変化すべきか

久松 広告代理店のフィーに関して、現在例えば100万円の予算に対してフィーを何パーセントもらいますという形式のものが、今後は、広告代理店が提供した価値相応のフィーをもらえるようになっていくのか、今後の広告代理店とクライアントの関係性について杉原様がイメージされているものはありますか?

杉原様 良い質問ですね。実は「コミッション型」がいまだに残っているのって日本と韓国くらいなのですよね。アメリカにはもともとなく、ヨーロッパの多くの国々では2005年ごろにやめているようです。
 「コミッション型」の良いところも当然ありますが、弊害もあります。例えば、コンペが実施された際には値下げ競争が起こりやすいことが挙げられます。しかし、サービス提供側である広告代理店として、その分サービスレベルを落としてもよいか、と言われるとそういう訳にはいかないというところが実情です。広告代理店側からすると「10パーセント20パーセントのフィーでそこまで出来ないですよ」と言いたいところですが、クライアントからするとその言い分を鵜呑みにするわけにもいかないと思います。

そうなってしまったもともとの原因として、日本には「サービスレベル」の概念が少なすぎた、と思っています。「この金額ならこのサービスレベルです」というメッセージを、コンサルティング会社も広告代理店もクライアントにしっかりと伝えてこなかったのではないでしょうか。クライアントもそれに慣れてしまい、値下げを当たり前に思っているから「安いフィーの中でどうにかしてよ」と言われることを当然として受け入れてしまっている。
 よくサービスレベルの概念で私が例として挙げるのが、クレジットカードのプラチナ、ゴールド、シルバー、普通でサービスレベルを分ける、という考え方です。そして、SLA(サービスレベルアグリーメント)の考え方を相互に理解して契約時に書面に残すことが大事です。

久松 広告主側は払っている全体の金額が高いため、総額に見合った価値を求めますよね。

杉原様 そうですね、そういった不健全な状況が20年ほど続いているように思います。弊社では「コミッション型」の案件はお受けしておらず、「フィー型」で案件をお受けしています。当初はクライアントに理解していただくのが簡単ではなかったのですが、現在では浸透しており、クライアントからも「その方がいいですね」と理解を得られています。

■インハウス化が進む企業と広告代理店の関係は

高橋 貴社では企業の運用型広告の運用体制をインハウス化するための支援事業をサービスとして提供しておられます。サービスのご紹介と、なぜクライアントのインハウス化に取り組むのかについてもお聞かせ願えますか?

杉原様 弊社ではインハウス化を「ライトインハウス」と「ヘビーインハウス」と大きく2つのモデルに分けています。「ヘビーインハウス」はマーケティング機能を自社内ですべて賄い、広告代理店などパートナーとは協業しないもの。「ライトインハウス」は戦略的な意思決定は社内で行いつつ、広告運用やレポーティングなどの部分は一部アウトソースする形のものです。

これまで多くのクライアントのインハウス化をご支援してきましたが、ほとんどがライトインハウスのお話です。ヘビーインハウスに取り組める企業は少しずつ出てきてはいますが、一足飛びにはヘビーインハウスへと移行できない企業が多い、というのが実情です。
 コロナ禍に突入し、弊社へのインハウス支援のお問い合わせも増えてきています。企業によって理由は様々ですが、未曾有の状況の中で「自社でパワーアップしないと」という考えが芽生えてきているようです。
 私たちがインハウス支援に取り組む理由の1つ目は、プラットフォーム側でキャリアを積んできたコンサルタントも多く、長く広告業界を見てきたという経験と、欧米のインハウス化実践企業の成功事例も多く見てきたというのが非常に大きいと思います。インハウス化するメリットはやはり意思決定のスピードが加速することです。現代ビジネスのスピード感ですと、広告代理店へのアウトソースで時間をかけてしまって意思決定が遅れては時代についていけない、というのが顕著になってきています。
 取り組む理由の2つ目は、「プラットフォーム側がインハウス化を推進している」という現状があることです。
 Overtureなどの過去の例を見ても、もともとは広告主とプラットフォーム側が直接コミュニケーションをとっており、広告代理店が介在することは想定していませんでした。少し余談になりますが、Overtureが日本に進出してきたときに「Paid Search」をなんと呼ぶのか議論がありました。海外ではそもそも「広告」という呼び方ではなかったのです。そんな時に、オプトさん、サイバーエージェントさん、アイレップさん、アウンコンサルティングさん、トランス・コスモスさんなどがいち早く販売に手を挙げてくれました。そういった企業さんに販売をお願いするにあたり「広告」という扱いにしないと売れないだろうという見方もあり、「検索連動型広告」と呼ぶことになりました。その後「リスティング広告」というように呼び方が変わっていきました。こうした背景から、もともと広告代理店が販売することは想定しておらず、広告代理店を介する販売モデルは完全に後付けなのです。
 販売を促進するうえで広告代理店は非常にありがたい存在ではありつつも、一方でプラットフォーム側から広告主へのメッセージはどうしてもまた聞きとなります。メッセージがうまく伝わらないジレンマがあり、そこを解消すべく、ここ10年ほどはプラットフォーム側から広告主へ直接コミュニケーションをとる動きになっていますね。この先もそれは変わらないと思いますし、弊社の様なインターミディアリな会社はどう価値提供していくべきか、ということが問われてきていると考えています。
 また別の背景として「モノからサービスへ」という流れもありますね。一方的な「marketing to」から、「marketing with」に変化しつつあります。クライアントを巻き込んだ「共創」が大事になってきている中で、広告代理店は広告主のビジネスに寄り添うことができているのか?これがより求められているように感じています。

久松 モノがコモディティ化し、サービスもコモディティ化した場合に、今後どのポイントで価値を生み出すのが大事だと思われますか?

杉原様 非常に難しいところですね。この話は広告、マーケティングだけでなく、最近よく言われているデジタルトランスフォーメーションにも言える話ですよね。私はビジネスモデルを変えるレベルのデジタル利用というのが、デジタルトランスフォーメーションだと思っています。広告業界としてもそこに向かうべきだと思いますが、なかなかそうもいかないところが課題としてあるのかなと思っています。
 デジタルトランスフォーメーションのようなビジネスモデルの変革を進めていくなかで、マーケティングは絶対に中核を担うはずだと考えています。ですので、マーケッターやサービサーも大事な位置づけを担うはずです。しかし、経営とマーケティングは切り離されている企業が多い。マーケティングを如何に経営に直結させ、ビジネスモデル変革を進められるのか、といった点が価値を生み出す上で大事だと思います。


日本企業のマーケティング機能

日本企業におけるマーケティングの優先順位の低さ、その原因は。

高橋 そもそも欧米に比べて、日本企業のマーケティングが経営のなかで優先順位が低くなってしまうのはなぜなのでしょう?

杉原様 多くの企業が成功体験として持っている、モノ作りが強かった時代の「良いものを作れば売れる」という高度成長の名残みたいなものではないでしょうか。あと、それを下支えする営業の力も大きかったように思います。マーケティングをしなくても営業すれば売れた、というような。

久松 これまでは人口ボーナスが効いていたという事でしょうか。

杉原様 そうですね。そういった成功体験がもう何十年も邪魔してしまっている状況ですよね。それから「マーケティングは専門職である」という認識も一因だと思います。日本企業においては、マーケティングを経験したことのないジェネラリストも多く、特に大企業の経営層になると「マーケティングがわからない」という人材も残念ながら少なくないのではないでしょうか。  
 私が新卒で入社した企業でも、会社からは「幹部候補なので、2年ごとに営業、経理、人事もやってもらう」と言われました。当時の同期もいまはジェネラリストとして活躍しています。それはそれで素晴らしいことなのですが、専門性を発揮する、という点においては厳しいですね。

高橋 いまインハウス支援のお話が来ている企業にはどういった共通点がありますか?

杉原様 中小企業、ベンチャー企業からのご相談の場合、社長さんから直接依頼が来ることが多いですね。大企業からの依頼の特徴としては、広告代理店のサービスレベルに満足しておらず、コンペの繰り返しで、試す先が無くなったとか、あまりポジティブな話ではないですね。ただ、大企業側としてはもっともっと事業やサービスに寄り添ってほしいなどの思いもあるのでしょうね。
 良い広告代理店のポイントは「データは事業主の持ち物であることを理解している」ことが挙げられると思います。広告アカウントのデータも含めて事業主の持ち物なのだと。また、SLAの考え方を持っている、アジャイルである、ビジネスに寄り添ってくれる、ビジネス構築に伴走してくれる、自走するためのナレッジを提供してくれる、こういったポイントも重要です。  弊社の場合は、切り売りの場合もありつつ、フェーズを3段階に分けて伴走型のインハウス支援を提供しています。自立期も通して半年ほどのお付き合いを終えたら卒業、それまではシャドウイングなどでサポートします、という形を取っています。

また、日本企業において課題となるのが「人事異動」です。クライアントで、8年という長きに渡り運用型広告のインハウス化をご支援している旅行代理店様がいらっしゃるのですが、大きな企業では人事異動で部内に知見が無くなってしまうことがあり、弊社がつなぎ役になるという形で長期的にご支援させていただいています。

マーケティングによる企業へのパートナーシップの構築がビジネスの未来を創る

杉原様 弊社では2020年11月にMightyHive社と業務提携を結びました。「企業がユーザーと直接やりとりできるためのファーストパーティデータの構築/インハウス利活用を支援する」ということで、彼らもインハウス支援を推進しています。CDP構築などはMighty Hive社に任せつつ、弊社ではメディアプランなどの、現場寄りの部分を担うという協業体制をとっています。バッティングするところは若干ありつつも、業界最高のフルスタックのインハウス支援体制で動いています。このサービスは大企業さんを対象としており、不動産業界からの依頼も若干ですがありますね。

私の印象ですが、不動産業界も比較的積極的にインハウス化を模索しているように見えますね。

高橋 中小の不動産会社さんのインハウス化だと、どのような形になるのでしょうか。中小ですと人材が不足しており、マーケティング機能が無い会社さんもあります。

杉原様 弊社では人材派遣サービスは考えておらず、人が充てられていないところは事業主側で充ててほしいと思っています。事業主側で人を充ててもらえれば、弊社もその人をしっかり育て上げられますよ、というサービスであればニーズがあるように思いますね。あとはやっぱり、いかに経営層にタッチできるかが大事ですよね。そこは逆にどうですか?

高橋 経営層へのタッチとマーケティングをよりご理解いただくという課題は、今後より取り組んで改善していきたい部分です。弊社も単なる反響を獲得するプロモーションのご支援から、より事業の根幹から支援できるパートナーになっていきたいと考えています。例えば最近ですと、新規事業の立ち上げから入りマーケティング戦略全般の構築まで支援させていただいた事例も出てきました。今後より成長を目指し事業の多角化を志向される不動産会社さんは増えていくと思いますので、そういったサービスを増やしていく予定です。

杉原様 昨年スイスの大学院で学んできたのですが、B2B企業のデジタルトランスフォーメーションの究極系とは何か、という話の中で、ゼネラル・エレクトリックの例を挙げていました。
 彼らはもともと重機械などのモノを販売していましたが、ある時からモノに対して対価は受け取らず、納品した部品につけているセンサーからの情報と経営データを掛け合わせた「ゼネラル・エレクトリックが貢献した売上高に応じてフィーを下さい」というモデルに転換したのです。
 そこで、B2Bのデジタルトランスフォーメーションの究極系はアドバイザリーサービスだなと思いました。場合によっては、ゼネラル・エレクトリックのような形で対価をいただくなんてことも先々あるビジネスモデルの一つかもしれませんね。


杉原 剛 アタラ合同会社CEO
KDDI、インテルでコンサルティング営業、マーケティングに従事。2002年にオーバーチュアの立ち上げメンバーとして営業戦略全般を担う。2007年にグーグルのAdWords、YouTube広告事業の戦略立案、オペレーション設計、APIエバンジェライズに携わった後、アタラ合同会社を創業し、代表を務める。WebAPIを活用した各種システム開発、マーケティングとITを融合した各種コンサルティングを行う。その傍ら、多くの起業、事業相談に対するアドバイスや支援を実施している。

アタラ合同会社
2009年9月10日設立。デジタルマーケティング支援企業。大きく分けて2つの事業を柱とする。1つは、API を活用した広告データ集計システムやレポートエンジンの開発、ダッシュボードの構築などを含むテクノロジーコンサルティング事業。もう1つは、運用型広告を中心としたコンサルティング/オペレーション、インハウス支援、トレーニングなどを含むナレッジコンサルティング事業。 2020年末、アナリティクス及びデジタルメディアのコンサルタント会社であるMightyHive(日本法人 - MightyHive株式会社、本社:東京都渋谷区、日本担当カントリーマネージャー:松崎亮、代表:クリストファー・マーティン)と業務提携開始。
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